【コラム】歩合給の給与計算の注意点

投稿:2022年8月1日更新:2022年8月4日コラム

歩合給とは

歩合給とは「売上げに対して〇%」や「契約成立1件につき〇円」といった一定の成果に対して支払われる賃金をいいます。

歩合給を採用する場合、固定給+歩合給の給与体系が一般的ですが、一定の制限の下で完全歩合給(フルコミッション)も認められています。

歩合給の給与計算は対応している給与計算ソフトも少ないため、手計算をされている会社も多いと思われます。

以下では歩合給の給与計算の際に特に間違いの多いポイントをまとめました。


歩合給と割増賃金

1時間あたりの賃金額を「歩合給額÷総労働時間」で算出したうえで、下記のような計算になります。

※「総労働時間」は残業時間や休日出勤時間も含めたその月の実労働時間をいいます。

①法定時間外労働

1時間あたりの賃金額×0.25×法定時間外労働時間

※大企業は月60時間を超える残業時間については割増率は0.25ではなく0.50を用います(令和5年4月1日より中小企業も同様)。

②深夜労働

1時間あたりの賃金額×0.25×深夜労働時間

③法定休日労働

1時間あたりの賃金額×0.35×法定休日労働時間

〈例〉

歩合給50,000円、総労働時間200時間、法定時間外労働20時間、深夜労働時間2時間、法定休日労働8時間だった場合

1時間あたりの賃金額:50,000円÷200時間=250円

時間外割増賃金:250円×0.25×20時間=1,250円

深夜割増賃金:250円×0.25×2時間=125円

休日割増賃金:250円×0.35×8時間=700円

歩合給に対する割増賃金合計:1,250円+125円+700円=2,075円


歩合給と有給休暇

1日の所定労働時間が8時間だった場合、下記のような計算になります。

1時間あたりの賃金額[歩合給額÷総労働時間]×8時間

〈例〉

歩合給100,000円、総労働時間が200時間だった場合

100,000円÷200時間×8時間=4,000円


完全歩合制と最低賃金・最低保障

完全歩合制が認められるとしても、従業員との関係が労働関係である以上は労働法の規制が及びます。

①最低賃金

最低賃金法により、完全歩合給制であっても地域の最低賃金を下回ることは認められません。

具体的には、[歩合給額÷総労働時間]で算出した1時間あたりの賃金額が最低賃金以上である必要があります。

②最低保障

労働基準法により、最低保障が定められており、成果がないからといっても最低保障額の支給は必要となります。

それでは、最低保障額とはいくらなのか?

明文規定はありませんが、実務的には平均賃金の6割程度が必要であると考えられています。


おわりに

賃金体系の中に歩合給があると給与計算の難易度が一気に上がります。

特に歩合給部分に対する割増賃金や有給手当の給与計算が漏れているために未払賃金が生じている会社が少なくありません。

未払賃金があると従業員とのトラブルだけでなく、助成金の申請もできないおそれが生じます。

中小企業で給与計算に不安のある方はぜひ当事務所にご相談ください。

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