介護・障害福祉事業について
介護・障害福祉事業は公費によるサービスですので、法律の規制を受けることになります。
そのため、介護・障害福祉事業の運営には一般の事業とは異なるさまざまな注意が必要になります。
この記事では労務管理・給与計算・会計・売上管理に関する介護・障害福祉事業特有の注意点について記載します。
人員基準
介護・障害福祉事業には、サービスごとに決められた人員配置基準が定められています。
この人員配置基準を満たしているか確認するために、毎月「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」の作成が義務付けられています。
もし人員配置基準を満たしていない場合には、報酬の減算や最悪の場合には事業の継続ができないおそれがあります。
したがって、一般的な事業と比べるとシフトの自由度は低く、利用者が少ないうちでも決められた最低限の人員配置が必要となりますので人件費の削減も限界があります。
特に新規に介護・障害福祉事業を始めようとする方は人と資金を計画立てて確保してから始めないと事業が軌道に乗る前に運営が困難になるおそれもありますので注意が必要です。
処遇改善加算
介護・障害福祉事業には、介護職員等の賃金改善を図るための制度として、処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算があります。
これらに共通するのは、加算額を超える金額を対象となる職員の賃金改善に充てる必要があるほか、毎年、処遇改善計画書と実績報告書の提出が義務づけられています。
重要なのは賃金改善を実施する際に「処遇改善手当」、「特定処遇改善手当」などの賃金項目で明確に分かるように区分して支給しておかないと、実績報告の際に集計が非常に手間がかかることになります。
また、処遇改善加算等を算定するための要件として、介護職員等のキャリアパスを就業規則や賃金規程で規定しておくことなどが必要になりますので、ある程度の専門的知識が求められます。
介護会計
複数の事業所がある場合には事業所ごとに、複数のサービスを提供している場合にはサービスごとに、会計を区分して損益計算書を作成しなければいけません。
〈例〉
※A事業所で訪問介護(介護サービス)と居宅介護(障害福祉サービス)、B事業所で通所介護(介護サービス)と居宅介護支援(介護サービス)を運営している場合
→A事業所とB事業所で会計を分けたうえで、A事業所とB事業所の中でもそれぞれサービスごとに損益計算書を作成する必要があります。
売上の区分は比較的容易ですが、水道光熱費などの複数のサービスに共通する経費についても利用者数の割合など応じて按分して配分することが必要です。
会計を区分しておらず、実地指導で指摘された場合は、通常は過去3年に遡って会計の区分した損益計算書の再作成が求められることになります。
なお、障害福祉サービスの就労支援事業(就労移行支援、就労継続支援A・B)については、就労支援事業会計というさらに特殊な会計処理が必要とされていますので注意が必要です(下記参照)。
売上管理
売上には介護保険や公費負担の国保連請求分と利用者に直接請求する利用者負担分があります。
国保連請求分の売上
介護報酬の請求は当月分を翌月10日までに国保連に請求することにより翌々月に入金される流れになります。
したがって、請求が問題なく処理されても売上の入金まで最短でも2か月かかることになります。
実際には、請求漏れがあったり、請求内容に間違い(過誤)があり一部差し戻し(返戻)があるなどで、長期にわたり売掛金となる場合も少なくありません。
売掛金管理をしっかりしないと再請求しなければいけないのに忘れてしまったり、決算の時点で売掛金がどれくらい残っているのか分からずに正しい税務申告ができなくなったりするなど問題が生じます。
利用者負担分の売上
利用者負担額は現金支払い、口座振替、口座振込のいずれかの方法で期限を定めて回収することになります。
訪問介護のように利用者の出入りが激しいサービスの場合には、回収漏れが起きやすく、回収できないままお亡くなりになってしまうようなケースでは、相続人にまで請求することは難しいことが少なくありません。
売掛金の回収漏れを極力回避するには売掛金の効率的な管理が不可欠となります。
おわりに
介護・障害福祉事業は一般の事業とは異なる特有の制度が数多くあり、法改正も頻繁にあるため、税理士や社労士などの専門家であっても介護・障害福祉の分野に精通していないと処理を誤るおそれがあります。
当事務所では介護・障害福祉事業所のサポート実績が数多くありますので、お悩みの方は是非ご相談ください。
また、当事務所が運営する介護・障害福祉の専門サイトがありますので、そちらもご覧いただけますと幸いです。